Edwin KehがTHE COMMON GLOBALを始めた理由

「10年後、20年後の世界は、私とは関係ない。でも。」
Edwin KehがTHE COMMON GLOBALを始めた理由

なぜ、いまゼロからブランドを始めるのか。

THE COMMON GLOBALのFounder / Executive Creative Director、Edwin Kehに、そんな問いを投げかけた。

これまで世界規模の企業でサプライチェーンに携わり、さまざまな組織や研究機関とともに、ものが生まれ、運ばれ、消費されていく仕組みを見てきたEdwin。

その経験を持つ彼が、いま東京・青山にTHE COMMON GLOBAL THE LABをつくり、新しいプロダクトを生み出している。

なぜ、もう一度ゼロから始めるのか。

取材の中で語られたのは、新しいブランドをつくることそのものよりも、もっと根源的な問いだった。

私たちは、未来をどう考えるのか。

そして、未来のために、いま何をするのか。

「未来の資源を借りて、いまをつくっている」


私たちは、地球の環境が変化していることを、もう知らないわけではない。

気候変動についても、資源についても、さまざまな課題についても、日々多くの情報が発信されている。

それでも、知っていることと、行動することの間には、大きな距離がある。

Edwinは、その理由のひとつとして、私たちが目の前の問題に追われていることを挙げる。

仕事、生活、家族、経済。

今日を生きるために必要なことは、たくさんある。

一方で、10年後、20年後の未来に起こることは、どうしても遠く感じられる。

「まだ先の話だから」と、現在の生活から切り離して考えてしまう。

けれど、Edwinはそこに違和感を持っている。

私たちは、未来にある地球の資源を借りて、いまの豊かさをつくっている。

そのことを、多くの人が少しずつ実感するようになってきた。

問題は、それをどう行動につなげるかだ。

未来が悪くなる傾向が見えている。

それでも、すぐに行動するのは難しい。

だからこそ、Edwinは「Better」という考え方を、単なるスローガンとしてではなく、日々のものづくりの中に置こうとしている。

「10年後、20年後の世界は、私とは関係ないのに」

そして、Edwinは自分自身について、こんな言葉を語った。

「私はもうこの歳で、10年後、20年後の世界は私と全然関係ないのに、でもちゃんとこの地球の未来を考えていきたいというのは、私の根っからの思想なのです」

この言葉が、とても印象に残った。

10年後、20年後。

その未来を自分自身がどれだけ直接生きることになるのかは、誰にもわからない。

ましてEdwinは、自分がここにいる時間は、若い世代よりも短いと理解している。

それでも未来を考える。

自分のためだけではなく、その先にいる人たちのために。

それは、何か特別な使命を与えられたからではない。

「根っからの思想」。

Edwin自身がそう表現したように、もっと個人的で、長い時間をかけて形成されてきた価値観なのだろう。

だからTHE COMMON GLOBALにおける「Better」は、単純に「環境に良いものをつくる」という話では終わらない。

自分たちにとって良いのか。

いまだけではなく、未来にとって良いのか。

その問いを持ち続けること。

それ自体が、Edwinにとっての「Better」なのだ。

知っているだけでは、未来は変わらない

未来について考えることは、決して難しいことではない。

「このままでいいのだろうか」と疑問を持つ。

「ほかに方法はないのだろうか」と考える。

けれど、そこから先に進むことは難しい。

実際に素材を変えてみる。

技術を試してみる。

プロダクトにしてみる。

使ってみる。

結果を見て、また改善する。

THE COMMON GLOBALがやろうとしているのは、まさにその繰り返しだ。

完璧な答えを最初から持つのではなく、問いを現実のものに変えていく。

だからTHE LABは、単なる店舗ではない。

素材を見て、触れて、考える。

科学と技術を知る。

そして、それが実際の服やプロダクトになるまでを見る。

「未来について考えましょう」と言葉だけで伝えるのではなく、手に取れるものとして提示する。

それがTHE LABの役割のひとつなのだと思う。

「Better」は、完璧になることではない

THE COMMON GLOBALが掲げる「Better」という言葉には、ひとつ重要な特徴がある。

それは、「これが正解だ」と決めないことだ。

今日より明日。

いまより、その先。

一度つくったものを完成形として固定するのではなく、そこからさらに問い直す。

それは、科学や研究の考え方にも近い。

なぜこうなっているのか。

別の方法はないのか。

もっと良くできないか。

何が本当に必要なのか。

そうやって問い続けることで、新しい可能性が生まれる。

だからTCGにとって、イノベーションは必ずしも「誰も見たことのないものをつくること」ではない。

すでにあるものを見直すこと。

使い続けられるものを、さらに良くすること。

素材の持っている可能性を、別の角度から引き出すこと。

そして、これまで当たり前だと思っていた仕組みに、もう一度問いを投げること。

Betterとは、派手な変化だけを意味しない。

小さな改善の積み重ねもまた、Betterなのだ。

未来を考えることは、ものづくりを考え直すこと


服は、毎日の生活の中にある。

着る。

洗う。

しまう。

また着る。

そして、いつか手放す。

一着の服には、素材をつくる人、加工する人、デザインする人、縫製する人、運ぶ人、販売する人、そして着る人が関わっている。

その一つひとつの工程を考えていくと、服は決して「デザインされた一枚の布」だけではない。

その背景には、大きな仕組みがある。

だからこそ、より良い服を考えるためには、服そのものだけを見るのではなく、その背景まで見る必要がある。

素材はどこから来たのか。

どのようにつくられたのか。

どんな技術が使われているのか。

どれくらい長く使えるのか。

使い終わったあと、どうなるのか。

そして、その選択は誰にとって、何にとってBetterなのか。

Edwinがこれまでサプライチェーンに関わってきた経験は、ここにつながっている。

ものをつくることは、単に商品を完成させることではない。

その商品が生まれるまでの仕組みそのものを、どうBetterにできるか。

そこまで考えることが、これからのものづくりには必要なのだ。

ひとつの答えではなく、「問い」を共有する

Edwinがもうひとつ大切にしているのが、コンセプトの力だ。

取材の中で彼は、強いコンセプトが人を惹きつけることについて語った。

明確な考えがあれば、その考えに共感する人が集まってくる。

それは、ブランドにとって非常に大きな力になる。

THE COMMON GLOBALにも、素材、科学、テクノロジー、デザイン、クリエイティブなど、さまざまな領域の人たちが関わっている。

全員が同じ専門性を持っているわけではない。

だからこそ、一つの強い問いを共有することができる。

「もっとBetterにできないか?」

その問いがあれば、それぞれの専門性から違う答えを持ち寄ることができる。

科学者は科学から。

素材の専門家は素材から。

デザイナーはデザインから。

そして、使う人は自分の体験から。

ひとつの正解に全員を合わせるのではなく、異なる視点を重ねながら、より良い可能性を探していく。

Edwinがつくろうとしているのは、そんな環境でもあるのだと思う。

THE LABは、「答え」を見せる場所ではない


青山にオープンしたTHE COMMON GLOBAL THE LAB。

そこには、もちろんプロダクトが並んでいる。

けれど、そこだけを見ると、この場所の意味を十分には理解できないかもしれない。

THE LABで見ることができるのは、完成した商品の姿だけではない。

その背景にある素材。

そこに使われている技術。

そして、なぜその素材や技術を選んだのかという考え方。

つまり、商品にたどり着くまでの「問い」そのものだ。

だからこそ、THE LABでは、服を見るだけではなく、素材を見てほしい。

触れてほしい。

そして、少し立ち止まって考えてほしい。

なぜ、この素材なのか。

なぜ、この機能なのか。

なぜ、このデザインなのか。

そして、

「これは、何をBetterにしているんだろう?」

と。

70歳からのスタート


取材の最後、Edwinは、自分自身の年齢についてもユーモアを交えながら話してくれた。

「もう70歳ですから。そこまで先はないですから。」

そして、周囲に向けて、

「こんな老人に頼らないで」

と笑う。

けれど、その言葉とは裏腹に、彼が考えている時間軸は、自分自身の人生よりもずっと長い。

10年後。

20年後。

さらにその先。

自分が直接その未来を生きるかどうかに関係なく、地球の未来を考える。

その姿勢こそが、THE COMMON GLOBALを始めた理由のひとつなのではないだろうか。

ブランドをつくることが目的なのではない。

「より良くする」という思想を、具体的なものづくりに落とし込む。

そして、その思想に共感する人たちをつなげていく。

そこから、また新しい問いが生まれる。

Better for us. Better for our world.

「Better」という言葉は、とてもシンプルだ。

けれど、本当にBetterなのかを考え始めると、問いはどこまでも広がっていく。

自分にとって良いのか。

誰かにとって良いのか。

いまにとって良いのか。

未来にとって良いのか。

その答えは、ひとつではない。

だからこそ、考え続ける。

試してみる。

学ぶ。

改善する。

そして、また次の問いへ進む。

Edwinが70歳になったいま、ゼロからTHE COMMON GLOBALを始めたこと。

それは、新しいブランドをつくるというよりも、これまで積み重ねてきた経験を、もう一度「未来」という問いに向け直すことだったのかもしれない。

10年後、20年後の世界は、自分とは関係ない。

それでも、その未来を考える。

その思想に共鳴する人が集まり、知識や技術やアイデアを持ち寄り、まだ見えていない可能性を探していく。

THE COMMON GLOBAL THE LABは、そのための場所として、東京・青山から始まった。


Better for us.
Better for our world.

THE LABから、世界へ。

まだ答えのない未来の服を、一緒に考えるために。

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